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  • ぜんそくは、空気の通り道である気管支が狭くなって、息が苦しくなる状態が、繰り返し起こる病気です。せき(咳)だけが目立って、診断しにくい場合もあります。
  • 現在日本では、こども全体の約5~7%がぜんそくとされており、その数は増え続けています。
  • 強力に炎症を抑える吸入ステロイド薬が、ぜんそく治療の中心になっています。
  • ぜんそくは、長期にわたる治療が必要な慢性の病気です。

★ 気管支喘息診療のポイント

気管支喘息(以下、喘息)の病態が、気道の慢性的な炎症であることが理解されるようになり、抗炎症剤である吸入ステロイド薬の使用により、喘息患者さんの症状がかなり抑えられるようになりました。しかし、これで喘息の全てが解決されたかというと、現状はまだそんな域には達していません。

 

-小児喘息診療の課題-

  • 何をきっかけにして喘息が発症していくのか?
  • どんなお子さんが喘息になりやすいのか?
  • 小さなお子さん(2歳未満)の喘息をどのように診断し、治療すればよいのか?
  • 喘息患者さんの気道の状態(気道炎症や気道リモデリング)をどのように評価すればよいのか?
  • 吸入ステロイド薬で喘息が治るのか?
  • 吸入ステロイド薬以外に優れた喘息治療薬はないのか?
  • 小児喘息が成人まで続かないようにするにはどうすればよいのか?
  • 喘息患者さんでみられる進行性の肺機能の低下をどのようにして防ぐか?

これらの点から喘息をみると、必ずしも簡単な病気ではないことがよくわかります。


ロイコトリエン受容体拮抗薬

 「ロイコトリエン受容体拮抗薬」と言われてもピンとこない方が多いかもしれません。
 オノン®とかシングレア®、キプレス®という薬剤名ならどこかで聞いたことがあるよということになると思います。これらは、ロイコトリエンという強力な気道収縮物質の働きをブロックする薬であり、いわゆる抗アレルギー薬に分類されます。現在、喘息発作予防の内服治療薬としては中心的な位置を占めるようになっています。
 個人的にちょっと気になるのは一般診療におけるこの薬の使われ方です。喘息という診断をしっかり告げられていないお子さんに処方され続けていたり、そうかと思えばかぜ薬のように4-5日分のみの処方を繰り返されている場合もあります。基本的には喘息の長期管理薬(予防薬)ですから、適応を考えて慎重に処方されるべき薬だと思います。
 さて、ロイコトリエン受容体拮抗薬はアレルギー性鼻炎の鼻閉(鼻づまり)に対しても有効な薬剤です。喘息の患者さんはアレルギー性鼻炎を合併する頻度が高いので、喘息の患者さんにロイコトリエン受容体拮抗薬を使用することは一石二鳥の治療と考えられます。


吸入ステロイド薬

 喘息の病態が「気道の慢性炎症」であることが理解されるようになり、強力な抗炎症薬である吸入ステロイド薬が治療の主体となってきました。吸入ステロイド薬のおかげで、喘息発作が原因で死亡する患者さんが減少していることは疑いのない事実でしょう。また、この薬の大きな長所は、薬が気道に直接作用するので、効果が高い割に副作用が少ないことです。
 しかし、わが国の喘息患者さんでは吸入ステロイド薬を使用している割合が、欧米諸国と比較してきわめて低いという実態があります。喘息の専門家たちも、この現状を嘆いており、吸入ステロイド薬の普及を推進しようと努力しています。確かに、不必要な救急受診や入院を余儀なくされている患者さんは少なくないと思われます。
 今後は国内においても徐々に処方量が拡大していく可能性が大きいですが、我々は以下のような点に注意すべきです。

1)適応を慎重に検討しているか?
 すべての喘息患者さんに吸入ステロイド薬が必要というわけではありません。ある一定の基準(ガイドライン等)に照らし合わせて、その必要性を考慮します。基本的に現在は処方不足傾向にあるわけですが、過剰な処方にも気をつける必要があります。

2)吸入指導を行っているか?
 吸入ステロイド薬を処方する医師も、自ら患者さんに吸入指導を行っていることは少ないものです。徹底した吸入指導を行わなければ、吸入の効果が十分に発揮されません。また、吸入指導は、医師と患者さんが喘息という病気を見つめなおす重要な作業であると考えられます。

3)必要最小限度の量を設定しているか?
 吸入ステロイド薬は、常用量であれば長期的にも大きな副作用はないということになってきました。また、全身への影響(成長など)が少ない製剤が次々と開発されています。しかし、数年あるいは数十年という単位で吸入ステロイド薬を使用する患者さんがいるわけですから、できる限り少ない投与量で管理できればそれに越したことはありません。我々医師は、患者さんの体に対する負担を小さくするように、常に努力する必要があります。

4)吸入ステロイド薬の使用意義を理解しているか?
 最近の研究結果からすると、「たとえ喘息の発症早期に吸入ステロイド薬を使用しても喘息が治るわけではない」、ということがわかってきました。また、「気道リモデリング」という気道の壁が厚くなったような状態に対しても、吸入ステロイド薬の効果は十分とは言えません。すなわち、現時点では吸入ステロイド薬は、喘息症状を抑えるための優れた薬なのです。それだけでも十分すぎる程画期的な薬であるわけですが、医師は、「喘息における吸入ステロイド薬の意義」について、常に意識している必要があります。


急性発作時の対応

 喘息の発作に対して、最も効果の発現が早く確実に作用する薬は吸入β2刺激薬(ベネトリン®、メプチン®など)です。また、この薬に対する反応が良好であることは、喘息という疾患の特徴(気道可逆性といいます)でもあります。ガイドラインにおいても、発作時にはβ2刺激薬を反復して吸入するように記載されています。しかし、一般の診療においてβ2刺激薬反復吸入が幅広く実践されているかというと必ずしもそうではありません。国内では、初回吸入無効時の処置として「アミノフィリン点滴」を選択する小児科医師が多いのです。1回吸入して効かないと、患者さんはすぐに注射(点滴)をされてしまうわけです。
 β2刺激薬の定量噴霧式吸入器(MDI)(携帯型の吸入器)を過剰に使用することが、喘息による死亡につながっているのではないかと指摘されてきました。いまだに確実な結論は出ていませんが、多分この薬そのものが悪かったわけではなく、使用法が悪かったのです。つまり、以前は、予防治療を行わないでβ2刺激薬の定量噴霧式吸入器に頼り続けるような患者さんがたくさんいたのだと思います。そのようなことを続けていると次第に気道の炎症が悪化してしまいます。苦しい時(発作時)にβ2刺激薬を吸入すること自体が悪いはずはありません。むしろ最も優先すべき治療なのです。