先日、S医大のN教授にお会いしました。内科領域でスギやダニのワクチンを使用した減感作療法を積極的に実施されている第一人者の先生です。「君ね、減感作は患者さんの症状を何とか良くしてあげたいという熱い心がなければできないんだよ。これからもがんばりましょう。」と力強いお言葉をいただきました。
かつては日本においても喘息の治療の一つとしてハウスダストのエキスを用いた減感作療法がさかんに行われていましたが、最近では吸入ステロイド薬が治療の中心になり、減感作療法はどこかに追いやられてしまって感があります。
喘息に対してのダニやハウスダストの減感作療法は有効性が乏しいのでしょうか?、やはり、皮下注射による減感作療法は手間がかかり危険性も高いものなのでしょうか?、確かに喘息の悪化因子はダニだけという場合は少ないと思われますし、ダニの減感作だけでその患者さんの喘息がすんなりと解決するようには思われません。しかし、吸入ステロイド薬はあくまでも対症療法的な限界も見えてきており(非常に優れた対症療法薬でありますが・・・)、喘息の病態の基礎にある免疫学的な異常を治療標的とする減感作療法には改めて注目する必要があると思います。
実際に私がダニの減感作療法を施行しているのは、喘息に対してではなく、通年性のアレルギー性鼻炎に対してです。小学生以上で、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬その他の薬物療法が手放せなくなったお子さんに対して、希望に応じて治療を試みています。以前は、ハウスダストエキスを使用していましたが、あまり手ごたえが感じられなかったので、現在はダニ(輸入)を使用しています。スギ花粉症に対するスギの減感作療法は効きます。これはこれまでの少ない経験(それでも40人くらいは施行しました)からも確信できます。現段階では、喘息に対してダニの減感作療法を行う計画はありません。