乳児アトピー性皮膚炎は生後1-3 ヶ月頃に初発することが多く、特に顔の湿疹で始まるパターンがよくみられます。初診の外来で相談を受けることが多いのは、生後7-8か月から1歳過ぎくらいの既にかなり皮膚状態が悪化したお子さんです。いつも感じるのは、「もう少し早い段階でなんとかできなかった・・」という思いです。中には非常に短期間のあいだに重症化してしまった患者さんもいるかもしれませんが、ほとんどの例では最初は顔面に始まる軽度の湿疹であったはずです。その後の悪化を予測して早い段階で皮膚状態を改善してあげることが重要だと思われます。
さらに我々が考えることは、もっと早期の段階で赤ちゃんに何かしてあげられることはないかということです。すなわち、生後早期からのスキンケアによってアトピー性皮膚炎の発症予防が可能かどうかという問題です。ブツブツとした湿疹が出現してから対応するのではなく、湿疹が何もない新生児期からていねいな入浴と保湿剤の塗布によるスキンケアを励行すれば、もしかしたら乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防できるかもしれないという期待感があるのです。
アトピー性皮膚炎の発症については遺伝的な側面も強いので、残念ながらスキンケアのみで発症を完全に予防することはできないのかもしれませんが、少なくとも、アトピーの発症を遅らせたり、発症後の症状を軽症化させたりすることは可能かと思われます。
母親は生まれたばかりの小さな赤ちゃんを皮膚科に連れていこうとはしないかもしれません。したがって、小児科医はこのようなスキンケア指導について関心を持たなければいけないということになります。